ウ・ティエンチャン(呉天章)

春宵夢 Ⅳ

1956年- 台湾

暗い部屋の中に一枚の絵が掛けられている。突然台湾の「懐メロ」歌謡が流れ出すと、それに合わせて額縁の電飾がリズミカルに明滅し、絵の中の少女が現れては消える。安っぽく、懐かしく、いかがわしく、そして甘い感傷が部屋を満たす。ウ・ティエンチャンにとって、1950年代は重要なテーマであり、その時代は作者にとって、異文化支配が続いた台湾が、もっとも台湾らしくあった時代なのである。流れる歌は当時の流行歌であるチェン・フェンラン(陳芬蘭)「幸福な船出」(原歌は日本の歌謡曲)であり、少女の絵はやはり当時の写真館で写された写真をもとにイメージを描き変えたものである。作者の中で、50年代は台湾の「幸福な船出」の時代であった。そして、それはつかの間の、「春の宵の夢」だったのだろうか。(UM)

作品詳細

作品名 春宵夢 Ⅳ
作者名 ウ・ティエンチャン(呉天章)
制作年 1997年
材質/技法 油彩、オブジェ・画布、電飾、音ほか
サイズ 207.5×167.5×12.0 cm