アジア美術からみるLGBTQと多様性社会
- 期間
- 2019年12月2日 (月) 〜 2020年3月17日 (火)
- 会場
アジアギャラリー
はじめに
福岡市は2018年4月から、典型的とされていない性自認や性的指向を持つマイノリティの方のパートナー関係を尊重するために「パートナーシップ宣誓制度」を始めました。この制度の導入は、全国では7番目、政令指定都市では札幌に次ぐ2番目、九州では初めての導入となりました。
本展は、福岡市の「パートナーシップ宣誓制度」を記念し、またこのような状況を受けて当館のコレクションからLGBTQの当事者の作品、及び現代アジアにおける多様性社会の在り方を問う作品を紹介します。
展示の前半では、「LGBTQ」という言葉が存在しなかった1930年代の写真作品や、欧米を中心に広がった性的マイノリティの権利を求める運動が活発になった1970年代に描かれた絵画、そして「LGBTQ」という言葉が世界的に認知された1990年代から2000年代までの写真や彫刻を合わせて紹介します。
展示の後半では、1950年代から欧米を中心に繰り広げられた公民権運動をきっかけとして生まれた、「あらゆる差別や排除を否定し多様性を認め合う社会=多様性社会(ダイバーシティ)」という言葉をキーワードに、外国人労働者や外国人花嫁など、現代社会の周縁に置かれる人々を鮮明に描き出した1980年代から現在までの作品を紹介します。
異なる時代に活動した性的マイノリティの当事者である美術家たちの作品と、多様性社会の在り方を問う作品を紹介する本展を通じて、「少数派」とされる人々の存在を知る・理解すると当時に「多数派」とは誰であり、それはどういうことなのかを考える契機となれば幸いです。
参考文献
・LGBT基礎知識(発行 福岡市
・はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで(発行 ナツメ社)
・リベラシオン人権研究ふくおか(発行 福岡県人権研究所)
「LGBTQ」とは?
LGBTQとは性的マイノリティの一部を表す言葉として1970年代から世界中で使用されてきました。LGBTQという言葉を理解するためにまず、人間の「性」は4つの要素によって構成されていることを知らなければなりません。
1. 戸籍に記載されている性別→身体の性
2. 自分の性別を自分でどう思うか→自認する性(性自認)
3. どういった人を好きになるか→好きになる性(性的指向)
4. 服装やしぐさ言葉遣いなど→表現する性
人間の「性」は、上記の1~4の組み合わせによって「多様な性」の在り方が存在します。そのなかでも「性自認」と「性的指向」は、自己意識(アイデンティティ)を構成する重要な要素となります。
これらを前提にした「LGBTQ」という言葉は以下のような意味をもっています。
L…女性として女性が性的対象になる人(レズビアン)
G…男性として男性が性的対象になる人(ゲイ)
B…性別に関わらず恋愛対象になる人(バイセクシュアル)
T…生まれた時に割り当てられた身体の性別と異なる性別を生きる人(トランスジェンダー)
Q…男性/女性にあてはまらない性的マイノリティの総称である「クィア」と、自らの性別がわからない・意図的に決めていないことを表す「クエスチョニング」を合わせた言葉
※異性愛者は「ヘテロセクシャル」、割り当てられた性に違和感や距離感を抱かない人を「シスジェンダー」と呼び、世界の人口の約90%以上がこれに当てはまります。
一方で、「LGBTQ」という言葉に含まれない性的マイノリティもいます。
身体が男女どちらかであると言えない「インターセックス(性分化疾患)」や、男女どちらにも性的な魅力を感じない「アセクシュアル」などです。
近年では、性的マイノリティを表す「LGBTQ」から、性自認(セクシャル・オリエンテーション)と性的指向(ジェンダー・アイデンティティ)の頭文字を繋げた「SOGI(ソジ)」という言葉に変化しつつあります。それは、「LGBTQ」に当てはまらない人や、あらゆる形の性自認や性的指向がグラデーションのように存在するという観点から生まれています。
参考文献
・LGBT基礎知識(福岡市)
・はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで(ナツメ社)
・リベラシオン人権研究ふくおか(福岡県人権研究所)
・にじ色の本棚LGBTブックガイド(三一書房)
・日本と世界のLGBTの現状と社会課題SOGIと人権を考える(かもがわ出版)
※本展において、「マー・リュウミン(馬六明)」の作家解説パネルに記載されておりました「トランスジェンダー」を誤った解釈で使用している箇所がありました。謹んでお詫び申し上げます。
(2019.12.02)
会場 | アジアギャラリー |
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観覧料 | 一般200円(150円) 高校・大学生150円(100円) 中学生以下無料 |
展示品 | 絵画、写真、彫刻、映像、インスタレーションなど約35点 |
主催 | 福岡アジア美術館 |
問い合わせ | Tel:092-263-1100 |