あじびコレクションX―②
「怪物たちの時代」
- 期間
- 2021年6月24日 (木) 〜 2021年9月21日 (火)
- 会場
アジアギャラリー
「怪物」と聞いて皆さんはいったい何を想像するでしょうか。古典的なフランケンシュタインや狼男、それともいま話題の鬼や巨人でしょうか?! 実はここに登場するのはもっとスケールの大きい怪物たちです。彼らは私たちの生命や財産を守るためにこの世界に産み落とされたのですが、あまりに巨大な影響力を持ったがために、それが暴走し、醜く威圧的な姿になったのでした。ダダン・クリスタントが視覚化した怪物は、30年以上に渡ってインドネシアを我がものにし、パンヤーの描いた怪物は、タイやインドシナ諸国の人々の暮らしを長らく翻弄し続けたのでした。今回の「あじびコレクションX」では、作品のテーマや時代背景などが共通する二作品に込められたメッセージを読み解きます。
◆「怪物たちの時代/LEVIATHAN: ERA OF MONSTERS」展示作品
1.ダダン・クリスタント/Dadang Christanto[インドネシア]《官僚主義》1991‐92年
1990年代以降、インドネシアの新しい美術潮流を作りだした立役者のひとり。ジョグジャカルタで活動した後、オーストラリアへ移住。本作では長い舌を出した男たちが、より力のある者に媚びへつらう姿が描写されている。一見するとコミカルな作品だが、その核心にあるのはスハルト軍事独裁政権への痛烈な批判であり、1965年の弾圧によって命を落とした共産主義者や華僑たちへの哀悼であるかもしれない。
2.パンヤー・ウィチンタナサーン/Panya Vijinthanasarn[タイ]《冷戦》1979年
作者は、タイ仏教の壮大な宇宙観に基づきながらも、同時代の問題に言及してきた画家。本作では、当時の冷戦構造と、それに影響を受けるアジア諸国の政治状況を表現。作品に登場する怪物はそれぞれ資本主義国、共産主義国、内戦状態の小国を象徴。その足下では、1973年にタイで起こった民主化運動とそれを弾圧する兵士の様子が描かれている。怪物の姿は仏教寺院の蛇や悪魔の装飾などに着想を得ている。