グエン・カン
ホーおじさん、村へ行く
1925年創設のインドシナ美術学校では、油絵の他に絹絵や漆絵も教えられ、それぞれベトナム近代美術の一ジャンルとして発達した。同校第6期生のグエン・カンは漆絵の発展に重要な役割を担った画家である。この作品では、ベトナム建国の父ホー・チ・ミンが、ある村を訪ねる様子を漆絵で描いている。手拭いを首に掛けたホーの周りには、村の大人と子ども、さらには動物までもが集まっている。政治家の周りを子供が取り巻くという構図は、人物の父性を強調し、為政者の力を象徴的に表すものであり、中国のプロパガンダ美術などでよく用いられる手法である。ただし、この作品では通常そうした作品で見られる人物を理想化する脚色はなく、村人と同じ普段着で「ホーおじさん」と呼ばれて親しまれたこの英雄の人柄がうかがわれる。この作品が制作された1958年は二つの戦争の間にある短い平和の時であり、漆絵独特の金色が束の間の幸せを示すかのようだ。(YY)
作品詳細
作品名 | ホーおじさん、村へ行く |
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作者名 | グエン・カン |
制作年 | 1958年 |
材質/技法 | 漆・板 |
サイズ | 92.0×190.0 cm |