「あじび研究所」シリーズ03ーA.H.マハヴァル「切望」1966年

期間
2018年9月20日 (木) 〜 2018年12月25日 (火)
会場

アジアギャラリー

あじび研究所へようこそ

あじびが所蔵する約2900点のコレクションから1作品を掘り下げて紹介する企画「あじび研究所」。

3回目の今回は1966年にパキスタンで上映された大ヒット映画「切望」のポスターです。美術館のコレクションは、1点1点が、国や地域、時代を語るうえで欠かかせない存在です。本コーナーでは、普段のコレクション展の中では語りつくすことのできない、作者の意図や制作背景について、パネルや参考資料を交えながらより深く迫っていきたいと思います。「観る」作品から「読み解く」作品へ、新たなコレクション体験をお楽しみください。

 

A.H. マハヴァル(パキスタン)《切望》リトグラフ・紙、

1966年パキスタンのカラーチーで製作された映画「切望」(1966年)は、パキスタンでは75週間連続興行収入1位を達成し、南アジア全域で大ヒットした映画です。本作は映画ポスターを専門とする画家のA.H.マハヴァルが手掛けたもので、中央で寄り添う男女は、主演男優のワヒード・ムラッドと主演女優のズィバ。背景の林は、ヒロインが住むパキスタン北部の避暑地マリーの山あいです。ここでくりひろげられる悲恋を暗示するかのうように、モスグリーンを基調とした淡い色合いで、原画の濃淡や柔らかさが再現できるリトグラフの技法で刷られています。 当館では、本作を含め、1960-90年代のパキスタン映画のポスターを約100点所蔵しています。そのきっかけは、パキスタン、カラーチー生まれの現代美術作家ドゥリヤ・カジが収集している映画ポスターでした。彼女は日常生活のなかの生命力にあふれた大衆美術に惹かれ、自身の作品にそうした要素を取り入れると同時に、映画ポスターの収集と研究をしていたのです。その後、当館では、彼女の協力を得て2006年に「生活とアートⅣ ロリウッド!―パキスタンの映画ポスター」展を開催しましたが、そこで紹介した一部を当館で所蔵することになったのです。