
横尾忠則とアジア’89
- 期間
- 2018年9月20日 (木) 〜 2018年12月25日 (火)
- 会場
アジアギャラリー
本コーナーでは、福岡市美術館が所蔵する横尾忠則の作品のうち、アジアとの関わりの深い15点を紹介いたします。横尾忠則が興味を惹かれた神秘的なインド・イメージを展開させた《聖シャンバラ》シリーズと、1989年に横尾が参加した2つのアジア美術の展覧会「第3回アジア美術展」と「第4回バングラデシュ・アジア美術ビエンナーレ」のポスターや記録資料から、横尾とアジアとの関わりを紐解きます。
聖シャンバラ―インドと横尾忠則
1936年兵庫に生まれた横尾忠則は、60年代末のビートルズのインド訪問に衝撃を受け、インド音楽を聴き、お香を焚き、ヨーガを行い、インドへ思いを募らせていきました。そして、1974年12月、ついにインドの地を踏むことになります。本コーナーで紹介する《聖シャンバラ》シリーズは、横尾が初めてインドを旅する直前、同年の3月に南天子画廊(東京)での個展「聖シャンバラ」で発表された版画集です。横尾によれば「シャンバラとは、地球内部の空洞に存在するというアガルタ王国の首都の名前」(横尾忠則『インドへ』1974年、文芸春秋社)のことで、この千年王国には超人たちが住んでいるといわれます。近代的で合理的な知を超えるスピリチュアルなものに惹かれていた当時の横尾の関心が反映されたシリーズです。作品には、インドのお香のパッケージやヒンドゥーの神々のイメージやサイケデリックな極彩色が組み合わされています。
神秘的なインド・イメージは《SANTANA LOTUS》にも見出すことができます。このポスターは、アメリカのロック・バンドのサンタナによる、1973年の大阪公演を収めたライヴ盤『ロータスの伝説』のジャケット・デザインとして制作されたものです。サイケデリック・ファッションやインド文化、UFOやオカルト思想など神秘主義的文化への興味を抱いていた70年代の横尾を象徴するポスターのひとつと言えるでしょう。
横尾は90年代まで7度にわたりインドを訪ね、現地の映画看板職人との合作やインドの宗教ポスターを用いた舞台美術に携わるなど、70年代以降も多様なメディアに神秘的なインド・イメージを展開させていきました。
※展示作品(福岡市美術館)
《聖シャンバラ》シリーズの10点と《SANTANA LOTUS》1点 合計11点
横尾忠則とアジア‘89-福岡とダッカ
1989年、横尾忠則は2つのアジア美術の展覧会に参加しました。ひとつは、同年3月にバングラデシュ首都ダッカで開催された「第4回バングラデシュ・アジア美術ビエンナーレ」で、もうひとつは7月に福岡市美術館で開催された「第3回アジア美術展」です。
1981年に始まった「バングラデシュ・アジア美術ビエンナーレ」は、バングラデシュ政府が主催する国際展です。福岡市美術館の「アジア美術展」と同じようにアジア美術に焦点を絞り、国ごとに紹介するもので、日本は初回から国際交流基金の事業として、作家選考等を委嘱するコミッショナーを立てて参加してきました。「第4回展」(1989年3月1日~30日)では、コミッショナーとなった美術評論家の東野芳明が、横尾忠則と海老塚耕一の2作家を選考し、バングラデシュに紹介しました。横尾の出品作品は、スーツ姿の男3人が登場する《カタストロフィ》シリーズ(1986年)など、赤、青、黄の原色が巧みなバランスで保たれた大作絵画20点とポスター2点で、横尾自身も開会式の際にダッカを訪れています。
一方、同年7月には「第3回アジア美術展」が福岡市美術館で開かれ、横尾は、本展のメイン・ポスターを手掛けています。本作では、同年ダッカで展示された《カタストロフィ》シリーズに見られるような原色づかいに加え、70年代のサイケデリックな雰囲気が重ねられています。中央には、アジアをイメージさせる「トラ」がキャンバスに描かれ、「トラ」を絵筆でとらえる画家、ライフルでとらえる猟師、そして槍でとらえるヒトの姿が入れ子構造的に組み合わされ、作品が他の作品と複雑に関連しあう横尾作品の特徴をよく伝えています。
※「アジア美術展」は、福岡市美術館の開館記念展として1979年に初回が開催された後、「第4回アジア美術展」(1994年)までほぼ5年ごとに開催されました。アジア美術に焦点を絞った展覧会として画期的だった本展は、1999年の福岡アジア美術館の開館記念展「第1回福岡アジア美術トリエンナーレ」へと継承されました。
※展示作品・資料
〇「第3回アジア美術展」
ポスター原画、ポスター、製版フィルム2点 合計4点
同展図録、チラシ、チケット
〇「第4回バングラデシュ・アジア美術ビエンナーレ」
同展図録、日本展示部門の図録
ダッカ会場での横尾および出品作品の映像(3分程度)
会場 | アジアギャラリー |
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観覧料 | 一般200円(150円) 高校・大学生150円(100円) 中学生以下無料 |
主催 | 福岡アジア美術館 |
問い合わせ | Tel:092-263-1100 |