光をつかまえて

期間
2017年3月23日 (木) 〜 2017年6月27日 (火)
会場

アジアギャラリー

古代から人びとはうつろいやすく実体のない「光」をとらえようと、さまざまな発見や発明を繰り返してきました。美術の長い歴史においても「光」をどのようにとらえ、表現するかは本質的なテーマのひとつです。また、美術における「光」の意味と効果は時代ごとに変化し、絵画にはじまり版画や写真へと進んでいきます。本展の導入となるライオネル・ウェントは、スリランカのコロンボ出身の写真家です。ウェントは、ロンドンで法律と音楽を学んだ後、1930年代初めから本格的に写真作品の制作に取り組み始め、コロンボに写真スタジオ「チトラフォト」を設立しました。1943年にはスリランカ初の近代美術グループ「43年グループ」の創設に尽力したほか、スリランカでの近代美術や写真芸術の普及に貢献しました。ウェントが写真作品の制作に取り組み始める約100年前の1839年、写真機の礎となるダゲレオタイプがフランスで発明され、それまでは絵画や版画で行っていた図像の記録方法が大きく前進します。同時に、機械的に「光」を取り込み図像を定着させる写真は世界中の人びとを熱狂させ、さまざまな技法が開発されました。ウェントも例外ではありません。技法のあくなき探求と、故郷スリランカの日常的な風景を愛情を込めて捉えようとした彼の作品は、本展で紹介する他の作品を読みとくヒントにもなるでしょう。本展では、「光をつかまえて」というタイトルから3つのテーマを導きだしています。≪信仰の光≫では、宗教や神話をテーマにした象徴的な作品を。≪人間と自然を照らす光≫では、その土地の息吹をリアルに描きだす作品を。最後の部屋の≪またたく都市の光≫では、急速に発展する都市の輪郭を爆竹や炎の光で記録した作品をご紹介します。うつろいやすく実体のない「光」をアジアの現代作家たちがどのように表現し、何を照らしだそうとしたのか。作品ひとつひとつの「光」を感じていただければ幸いです。