ツェレンナドミディン・ツェグミド《オルホン河》1993年
アジアの美術―近代美術から現代美術へ
- 期間
- 2014年1月2日 (木) 〜 2015年3月24日 (火)
- 会場
アジアギャラリー
①アジアの近代美術の黎明期――洋風絵画の登場
主に19世紀以後のアジアでは、西洋諸国による植民地化や西洋との通商の中で、西洋絵画の画材(油絵や水彩など)と技法(遠近法や陰影法など)を使い、現地の人物・風俗・風景・神話をテーマにした洋風絵画が制作されるようになりました。ここでは、アジアが西洋近代世界と出会った時期に生まれた作品を紹介しています。
これらの絵画は、主にアジアを訪れた西洋人向けの輸出品として作られており、買い手である西洋人の異国趣味を反映した、きわめてエキゾチックな魅力に富む点が特色です。たとえば、中国広東地方で制作された「中国輸出用絵画」や、イギリス統治時代のインドの首都カルカッタ(現コルカタ)で見られた洋風絵画、同じインドで東インド会社の社員の注文を受けていたカンパニー派の細密画などがあります。
しかし、やがてこれらの絵画は、西洋人向けだけではなく、西洋的な生活スタイルを取り入れた現地の上流階級の人々にも受容されるようになっていきます。イギリス統治時代のビルマ(現ミャンマー)の都マンダレーの宮廷絵師たちが描いた洋風絵画もその一つで、ビルマの貴族が寺院に奉納したといわれています。また、民衆の間にも、インドのヴァルマー・プリントのような、西洋的な陰影法や遠近法を摂取した宗教絵画が普及していきました。
②アジアにおける近代美術の成立からモダニズムの展開まで
20世紀前半のアジア各地では、ナショナリズムを背景に、植民地からの独立の機運が高まり、国民国家形成へ向けた動きが見られました。美術の領域でも、そうした社会状況を反映して、近代国家にふさわしい美術教育や展覧会の諸制度が急速に整えられ、欧米に留学したり西洋式の美術教育を受けた若い美術家たちを中心に、自分たちの国にふさわしい近代美術が創出されていきました。
このコーナーの前半では、近代国家が形成されていく過程で制作された作品を紹介します。多くのアジアの近代美術家たちは、ゴッホやゴーギャン、マティスなどの印象派以降の西洋人画家の作品にひかれ、それらに学びながら、一方で自らの伝統的な表現や土地固有の題材、素材を積極的に取り入れることで、独自のものを創出しようとしました。また、地域によっては1930年代頃から、純粋な造形を求める西洋モダニズムに関心をよせ、抽象的な表現を試みる美術家やグループも登場しました。
20世紀後半、つまり太平洋戦争が終了すると、アジアの多くの国々が西洋や日本の植民地から独立し、独立国家として国際社会の中で本格的に歩み始めます。それと歩調を合わせるかのように、30年代頃から見られた抽象的な表現が、さらに広い地域で、いっそう盛んに追求されるようになりました。コーナーの後半には、そうした各地域における抽象表現の成熟を示す作品を展示しています。
③アジアの現代――美術社会的なテーマから多様な表現へ
戦後のアジアは、多様化とグローバル化の時代を迎えます。その変化は、国や地域によって異なりますが、不安定な社会情勢がつづき、軍事独裁政権とその反発としての民主化運動、経済の自由化と資本主義経済の弊害、都市と農村の分断や貧富の格差といった問題に直面していきます。こうした社会の大きな変化に対して、作家たちは作品を通して政治を批判したり、社会の不条理に異議を唱えたり、また見過ごされてしまうような些細な事柄や弱者へと目を向けていきます。1980年代からは社会的な問題をテーマとした作品が多く制作され、パフォーマンスやインスタレーション(空間全体を作品として構成する表現方法)といった新しい表現方法が試みられていきます。
1990年代には、グローバル化の波とアジアの経済発展により、アジアにも美術のマーケットが成長し、アジア各地で大規模な国際展が開かれるようになります。作家たちは世界各地へ移動・移住するようになり、人間関係のありかたも、美術の国際的なネットワークも多様化・細分化していきます。それに伴い、作品のテーマは社会的、歴史的なものだけではなく、個人的世界や日常といった身近なものへ、また表現方法には新たに映像やコンピュータなどを用いたメディア・アートが拡大・普及していきます。また、プロジェクトや観衆参加型のイベントを行うことによって作品を制作するなど新しい制作方法も模索されていきます。
①アジアの近代美術の黎明期――洋風絵画の登場
主に19世紀以後のアジアでは、西洋諸国による植民地化や西洋との通商の中で、西洋絵画の画材(油絵や水彩など)と技法(遠近法や陰影法など)を使い、現地の人物・風俗・風景・神話をテーマにした洋風絵画が制作されるようになりました。ここでは、アジアが西洋近代世界と出会った時期に生まれた作品を紹介しています。
これらの絵画は、主にアジアを訪れた西洋人向けの輸出品として作られており、買い手である西洋人の異国趣味を反映した、きわめてエキゾチックな魅力に富む点が特色です。たとえば、中国広東地方で制作された「中国輸出用絵画」や、イギリス統治時代のインドの首都カルカッタ(現コルカタ)で見られた洋風絵画、同じインドで東インド会社の社員の注文を受けていたカンパニー派の細密画などがあります。
しかし、やがてこれらの絵画は、西洋人向けだけではなく、西洋的な生活スタイルを取り入れた現地の上流階級の人々にも受容されるようになっていきます。イギリス統治時代のビルマ(現ミャンマー)の都マンダレーの宮廷絵師たちが描いた洋風絵画もその一つで、ビルマの貴族が寺院に奉納したといわれています。また、民衆の間にも、インドのヴァルマー・プリントのような、西洋的な陰影法や遠近法を摂取した宗教絵画が普及していきました。
②アジアにおける近代美術の成立からモダニズムの展開まで
20世紀前半のアジア各地では、ナショナリズムを背景に、植民地からの独立の機運が高まり、国民国家形成へ向けた動きが見られました。美術の領域でも、そうした社会状況を反映して、近代国家にふさわしい美術教育や展覧会の諸制度が急速に整えられ、欧米に留学したり西洋式の美術教育を受けた若い美術家たちを中心に、自分たちの国にふさわしい近代美術が創出されていきました。
このコーナーの前半では、近代国家が形成されていく過程で制作された作品を紹介します。多くのアジアの近代美術家たちは、ゴッホやゴーギャン、マティスなどの印象派以降の西洋人画家の作品にひかれ、それらに学びながら、一方で自らの伝統的な表現や土地固有の題材、素材を積極的に取り入れることで、独自のものを創出しようとしました。また、地域によっては1930年代頃から、純粋な造形を求める西洋モダニズムに関心をよせ、抽象的な表現を試みる美術家やグループも登場しました。
20世紀後半、つまり太平洋戦争が終了すると、アジアの多くの国々が西洋や日本の植民地から独立し、独立国家として国際社会の中で本格的に歩み始めます。それと歩調を合わせるかのように、30年代頃から見られた抽象的な表現が、さらに広い地域で、いっそう盛んに追求されるようになりました。コーナーの後半には、そうした各地域における抽象表現の成熟を示す作品を展示しています。
③アジアの現代――美術社会的なテーマから多様な表現へ
戦後のアジアは、多様化とグローバル化の時代を迎えます。その変化は、国や地域によって異なりますが、不安定な社会情勢がつづき、軍事独裁政権とその反発としての民主化運動、経済の自由化と資本主義経済の弊害、都市と農村の分断や貧富の格差といった問題に直面していきます。こうした社会の大きな変化に対して、作家たちは作品を通して政治を批判したり、社会の不条理に異議を唱えたり、また見過ごされてしまうような些細な事柄や弱者へと目を向けていきます。1980年代からは社会的な問題をテーマとした作品が多く制作され、パフォーマンスやインスタレーション(空間全体を作品として構成する表現方法)といった新しい表現方法が試みられていきます。
1990年代には、グローバル化の波とアジアの経済発展により、アジアにも美術のマーケットが成長し、アジア各地で大規模な国際展が開かれるようになります。作家たちは世界各地へ移動・移住するようになり、人間関係のありかたも、美術の国際的なネットワークも多様化・細分化していきます。それに伴い、作品のテーマは社会的、歴史的なものだけではなく、個人的世界や日常といった身近なものへ、また表現方法には新たに映像やコンピュータなどを用いたメディア・アートが拡大・普及していきます。また、プロジェクトや観衆参加型のイベントを行うことによって作品を制作するなど新しい制作方法も模索されていきます。
自然との交感
ツェレンナドミディン・ツェグミドの《オルホン河》は、モンゴルの雄大な自然のなかに、滝の女神が描かれた作品です。水の少ない、草原の国モンゴルにおいて、人々が感謝の思いとともに、滝に霊的な存在を見いだしたとしても不思議ではありません。作者によると、この作品を通して「自然の力と人間の悲しみや夢、幸福との結びつき」を描きたかったといいます。
またインド北部のビハール州には、「マドゥバニ画(あるいはミティラー画)」と呼ばれる絵画があります。この絵画の制作は、母から娘へと代々担われてきたもので、《クリシュナと牛》のように、この地域に伝わる神話や民間伝承、あるいは自然や動物との豊かな交感を歌い上げるような、生き生きとした絵画を生みだしてきました。
このように、アジア各地域には、それぞれに異なった自然の姿があり、人々はときに厳しく、ときに優しい、雄大な自然に寄り添いながら、家族や社会や文化を育んできました。ここでは、そうした自然との交感を喚起する作品をご紹介します。
| 会場 | アジアギャラリー |
|---|---|
| 観覧料 | 一般200円(150円) 高校・大学生150円(100円) 中学生以下無料 |
| 主催 | 福岡アジア美術館 |
| 問い合わせ | 092-263-1100 |