ハー・チオンウェン(哈瓊文)《母親の栄誉:母乳で生命を育て、汗水で社会主義に灌漑しよう》1958年
珠玉のアジアコレクション
- 期間
- 2015年3月26日 (木) 〜 2015年12月25日 (金)
- 会場
アジアギャラリー
キッチュ天国
「キッチュ」とはドイツ語で「まがい物」の意味ですが、「けばけばしさ」や「低俗さ」「安っぽさ」を認めながら、そこに美的価値を見出す「キッチュ」という感覚は1960年代以後の世界各地の美術に見られます。ここでは、アジアの大衆文化のキッチュなパワーを取り込んだ、開放的で躍動感にあふれた作品を紹介します。
母と子
母と子のあいだに育まれる愛。人にとってこれほど強い信頼で結ばれた紐帯はないでしょう。福岡アジア美術館のコレクションには、「母と子」を巡るたくさんの作品がありますが、ここでは[1:子に託された希望]、[2:母の不在、子の不在]、[3:理想の母と子]という視点から、母と子のさまざまな物語をたどります。
新年画
中華人民共和国成立後の1950-60年代前半にかけて、中国全土に大量に流通した政治宣伝用ポスターです。その色彩や形式、寓意に富んだ表現は、伝統的な年画(年始に家の内外に貼られる吉祥画)を踏襲し、明るい中国の未来像や人民の理想像がスローガンと共に視覚的に宣伝されました。また新年画の様式は、1920-30年代の商業ポスターの流れをくむグループと、木版画運動に由来するグループに分けられますが、とくに前者からは、資本主義から社会主義への変革を経て、中国の視覚文化がどのように展開したかをうかがい知ることができます。
アジアの近代美術
西洋諸国による植民地経営が活発化した19世紀以降、アジアでは西洋絵画の材料と技法を使い、現地の人物・風俗・風景・神話をテーマにした西洋風絵画が制作されるようになりました。これらの絵画は、西洋人向けの輸出品やお土産物、あるいは現地の上流階級向けに作られたもので、西洋人の異国趣味を反映した、きわめてエキゾチックな魅力に富んでいます。
しかし20世紀になると、植民地からの独立やナショナリズムの高揚を背景に、若い美術家たちを中心に、自分たちの国にふさわしい近代美術を創出していこうとします。アジアの近代美術家たちは、印象派以降の西洋美術に惹かれながらも、伝統的な様式や土地固有の題材、素材を積極的に取り入れることで、独自の表現を創出しようとしました。
《生命の樹》
イギリスの東インド会社が設立された17世紀以降、インドでは西洋人の異国趣味に合わせて、ヨーロッパでデザインされたインド更紗が次々に生みだされました。更紗とは木綿や絹地に動植物などの文様を染めた布のことです。インド、中国、ペルシャ、ヨーロッパなどのデザインが組み合わされた本作品はその一例ですが、中央には大きな「生命の樹」が描かれています。万物を生みだす命の源ともいわれる大木ですが、こうした樹木崇拝は旧約聖書のエデンの園や釈迦が悟りをひらいた菩提樹など、世界各地に存在しています。たくましい想像力によってデザインされたこのインド更紗は、当時の西洋人が抱いた「幻想のアジア」を色濃く反映しているといえるでしょう。
ここでは、この《生命の樹》を出発点にして、19世紀以降に西洋美術の技術や概念が本格的に受容されていく[1:インドの近代美術]と、風景画や静物画のモチーフとして人気のあった植物に着目した[2:気になる木]の二つのコーナーを見ていきます。
響きあう線と色 タントラ画とワルリー画
タントラとはインドに古くから伝わる神秘主義の経典のことで、ヨーガによる瞑想方法を図示したイメージをここでは「タントラ画」と呼んでいます。一方の「ワルリー画」とは、ワルリー族の描く素朴な絵のことで、もともとは村の生活や宇宙観などを壁に描いていましたが、近年では販売用に絵画として制作されるようになりました。ともにインド固有の興味深い造形ですが、とくにタントラ画はインド独自の抽象表現を模索していた画家たちによって、そのシンプルな形態やタントラの深遠な宇宙観が「美術」に取り込まれ、サイド・ハイダル・ラザ《クンダリニー》のような新たなタントラ画を生みだしました。
東洋が西洋に出会う
「東洋が西洋に出会う」とは、香港で生まれ育ち、パリで絵画と写真を学んだツェン・クォンチ(曽広智)の代表的な写真シリーズのタイトルです。アメリカやフランスなどの有名な観光地をめぐりながら、それとはまったく不釣り合いの格好で記念撮影するツェンにとって、西洋との出会いとはいかなるものだったのでしょうか。サングラスをつけた顔からは、その心理的ニュアンスを読み取ることができません。
このコーナーの作品にはどれも、圧倒的な文化力や政治力をもつ西洋に対して、あるいは西洋的価値観の入り交じった自己の内面に対して、アジア人としていかに対峙すべきかという葛藤が投影されています。
尊い日常へ ネパール地震によせて
2015年4月25日、ネパールのカトマンズ近郊を震源地にした大地震が起きました。それから1カ月経った時点で、犠牲者8000人を超すという未曾有の大災害で、ネパールの社会や日常生活に壊滅的な打撃を与えました。このコーナーでは、ネパールの自然や伝統的な街並み、微笑ましい日常の一コマを描いた作品などを紹介しています。ながく余震が続くなか、苦しい避難生活を強いられているネパールの人々が、一刻も早くこのような尊い日常へと立ち戻れるよう祈念してやみません。
| 会場 | アジアギャラリー |
|---|---|
| 観覧料 | 一般200円(150円) 高校・大学生150円(100円) 中学生以下無料 |
| 主催 | 福岡アジア美術館 |
| 問い合わせ | 092-263-1100 |