特別展

ベトナム、記憶の風景

期間
2025年9月13日 (土) 〜 2025年11月9日 (日)
会場

企画ギャラリー

1975年に終結したベトナム戦争(別名:抗米救国抗戦/第二次インドシナ戦争)は、ベトナムが大国アメリカを退け、既存の世界の在り方を大きく変えた歴史の転換点として知られます。
ベトナム戦争終結50周年を記念し開催する本展では、欧米列強による植民地支配と独立への闘い、難民の発生やグローバル化など、近代以降の世界の課題を絶えず経験してきたベトナム激動の100年を、ベトナムのアーティストによる美術作品やグラフィック約110点から辿ります。
祖国の理想の風景を描きだした優美な絵画から革命を鼓舞する力強いポスター、家族の記憶から歴史を語りなおす現代美術など、ベトナムのアーティストが祖国や自身と向き合いながら生みだした多様な表現を通して、これまで可視化されることのなかった近現代のベトナムを巡る「記憶の風景(メモリースケープ)」が鮮烈に浮かび上がってくるでしょう。
世界各地で今なお争いや暴力が絶えないなか、本展が今私たちの生きる世界を見つめなおし、また、近年ますます互いに重要な存在となりつつあるベトナムと日本両国の相互理解に資する機会となれば幸いです。

本展のみどころ

約100年間のベトナム美術の多様な展開を一挙紹介

1930年代から現在までのベトナム激動の100年の歴史を辿りながら、多様なベトナム近現代美術作品110点を当館所蔵作品を中心に紹介する、日本国内では過去最大規模の展覧会です。

戦争が残した傷と絶えず向き合ってきた歴史をもつベトナムの作品が現代に放つメッセージ

インドシナ戦争やベトナム戦争をはじめ、戦争が残した傷と絶えず向き合ってきた歴史をもつベトナムの作品が現代に放つメッセージとは。世界各地で争いや暴力が絶えない今だからこそ、その表現に向き合います。

日本の修復技術によって貴重なベトナム近代美術を未来に繋げるプロジェクトを特別紹介

自然災害の脅威が身近な日本において、近年美術作品の修復は大きな注目を集めています。本展ではベトナム近代の貴重な美術作品を日本の修復技術によって蘇らせ未来に繋げる、三谷文化芸術保護情報発信事業財団による「グエン・ファン・チャン修復プロジェクト」を紹介します。

展覧会構成

第1章 理想―描かれた祖国のイメージ

フランス植民地下で近代美術草創期を担ったベトナム人美術家たちが、新たな時代にふさわしい祖国の理想の風景を模索した作品を紹介します。

ルオン・スアン・ニー《読書する若い娘》1940年、福岡アジア美術館所蔵

 

第2章 熱気―駆け巡る戦場のリアル

人々の団結や戦意を鼓舞するポスターや、戦場の様子を克明に記録した写真など、ベトナム戦争を巡る当時の熱気を表した作品を紹介します。

ホアン・ティック・チュ《橋をわたる部隊》1973年、雪江なほみ氏所蔵

 

第3章 発展と郷愁―変わりゆく故郷のすがた

戦争終結後、統一国家として新たな国づくりのため都市開発や工業発展が進み、急激に変わりゆく社会のなかで、ベトナムの風景を見つめた作品を紹介します。

グエン・クアン・フイ《無表情な顔》1997年、福岡アジア美術館所蔵

 

第4章 追憶―歴史を携えて生きること

戦争を直接経験していない若い世代の美術家たちが、戦争の傷跡やトラウマを抱えながらも生きる家族や個人の物語から歴史を語りなおす現代美術を紹介します。

タオ・グエン・ファン《もの言わぬ穀粒》2019年、グエン美術財団所蔵 ©Thao Nguyen Phan and Nguyen Art Foundation

 

特設コーナー グエン・ファン・チャン修復プロジェクト

ベトナム近代美術における絹絵の巨匠、グエン・ファン・チャンの貴重な作品を未来につなげる、同財団による修復プロジェクトを紹介します。

グエン・ファン・チャン《籾篩》1960年、作家遺族蔵(三谷文化芸術保護情報発信事業財団寄託)