アジアの近現代美術―黎明期から現代まで
- 期間
- 2022年4月7日 (木) 〜 2022年9月6日 (火)
- 会場
アジアギャラリー
アジアの近現代美術―黎明期から現代まで
福岡アジア美術館では、現在約4000点(2022年4月現在)のアジアの近現代美術作品を所蔵しており、近代以降のアジア美術のコレクションとしては世界最大級です。西洋諸国との交流の中で描かれるようになった19世紀の絵画から、美術学校制度が確立された20世紀前半を経て、1970年代から2000年代の現代美術にいたるまでのアジア美術の流れをご紹介します。
1.アジア近現代美術の黎明期 : 19世紀―
19世紀以後のアジアでは、西洋諸国による植民地化や西洋との通商の中で、西洋絵画の画材(油絵や水彩など)と技法(遠近法や陰影法など)を使い、現地の人物・風俗・風景・神話をテーマにした洋風絵画が制作されるようになりました。本コーナーの前半では、アジアが西洋近代世界と出会った時期に生まれた作品を紹介しています。
これらの絵画は、主にアジアを訪れた西洋人向けの輸出品として作られており、買い手である西洋人の異国趣味を反映した、きわめてエキゾチックな魅力に富む点が特色です。たとえば、イギリス統治時代のインドの首都カルカッタ(現コルカタ)で見られた洋風絵画や、同じインドで東インド会社の社員の注文を受けていたカンパニー派の細密画、中国広東地方で制作された「中国輸出用絵画」などです。しかし、やがてこれらの絵画は、西洋人向けだけではなく、西洋的な生活スタイルを取り入れた現地の上流階級の人々にも受容されるようになっていきます。イギリス統治時代のビルマ(現ミャンマー)の都マンダレーの宮廷絵師たちが描いた洋風絵画もその一つで、ビルマの貴族が寺院に奉納したといわれています。
2.アジア近現代美術の成立からモダニズムの展開まで 1920年代―1960年代
20世紀前半のアジア各地では、ナショナリズムを背景に、植民地からの独立の機運が高まり、国民国家形成へ向けた動きが見られました。美術の領域でも、そうした社会状況を反映して、近代国家にふさわしい美術教育や展覧会の諸制度が急速に整えられ、欧米に留学したり、西洋式の美術教育を受けたりした若い美術家たちを中心に、自分たちの国にふさわしい近代美術が創出されていきます。
本コーナーの前半では、近代国家が形成されていく過程で制作された作品を紹介します。多くのアジアの近代美術家たちは、ゴッホやゴーギャン、マティスなどの印象派以降の西洋人画家の作品に学びながら、一方で自らの伝統的な表現や、地域固有の題材や素材を積極的に取り入れることで、独自のアイデンティティを創出しようとしました。
20世紀後半、太平洋戦争が終了すると、アジアの多くの国々が欧米や日本の植民地から独立し、独立国家として国際社会の中で本格的に歩み始めます。戦前から、内容よりも純粋な造形を重視するフォーマリズムなどの西洋モダニズムに関心をよせてきた美術家たちは、戦後も抽象表現をよりいっそう追求することになります。特に1960年代以降は、各地でアジア独自の抽象的な表現を試みる美術家や美術グループが登場していきます。本コーナー後半には、そうした各地域における抽象表現の成熟を示す作品を展示しています。
またあわせて、1930年代の上海を中心に人気を博した、舶来品の宣伝目的でつくられた中国商業ポスターや、キリスト教美術の要素をとりいれ、民衆の人気を集めたスリランカの仏教版画を紹介しています。
3.アジアの現代美術―社会的なテーマから多様な表現へ 1970-2000年代
戦後のアジアは、多様化とグローバル化の時代を迎えます。その変化は、国や地域によって異なりますが、不安定な社会情勢がつづき、軍事独裁政権とその反発としての民主化運動、経済の自由化と資本主義経済の弊害、都市と農村の分断や貧富の格差といった問題に直面していきます。こうした社会の大きな変化に対して、作家たちは作品を通して政治を批判したり、社会の不条理に異議を唱えたり、また見過ごされてしまうような些細な事柄や弱者へと目を向けていきます。1980年代からは社会的な問題をテーマとした作品が多く制作され、パフォーマンスやインスタレーション(空間全体を作品として構成する表現方法)といった新しい表現方法が試みられていきます。
1990年代以降のアジアでは、グローバル化の波と経済発展により、美術のマーケットが形成され、アジア各地で大規模な国際展が開かれるようになります。作家たちは世界の様々な場所へ移動・移住するようになり、人間関係のありかたも、美術の国際的なネットワークも、多様化・細分化していきました。また作品のテーマは社会的、歴史的なものから、個人的世界や日常といった身近なものまで多様化し、表現方法では新たに、パフォーマンスやインスタレーション(空間全体を作品として構成する表現方法)といった方法が試みられ、映像やコンピュータなどを用いたメディア・アートなども拡大・普及していきます。
会場 | アジアギャラリー |
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観覧料 | 一般200円(150円) 高校・大学生150円(100円) 中学生以下無料 |
主催 | 福岡アジア美術館 |
問い合わせ | 092-263-0011 |