あじびレジデンスの部屋 3
「都市を映す」
- 期間
- 2024年12月19日 (木) 〜 2025年4月8日 (火)
- 会場
アジアギャラリー
福岡アジア美術館では、1999年の開館時よりアジアからアーティストを受け入れ、滞在制作などを通して市民との様々な美術交流を図る「アーティスト・イン・レジデンス」を行ってきました。2022年より、Fukuoka Art Next(彩りにあふれたアートのまちをめざす福岡市主催の事業)の一環として、国内外から公募したアーティストが、Artist Cafe Fukuoka(旧舞鶴中学校)のスタジオで制作に取り組んでいます。こうしたレジデンス事業の取り組みとその後のアーティストの活躍を紹介するため、2019年度より「あじびレジデンスの部屋」を開設しました。
今年度のシリーズ3回目は、3人のレジデンス・アーティストが福岡という都市をどのように捉えたのかを滞在中に制作された作品から探ります。天神地下街や川端商店街を行き来する人々の様子を映像作品で制作した韓国出身のムン・キョンウォン(2004年度滞在)。川端商店街の日々を映像記録に残し、反復される平凡な日常の大切さを想起させる香港出身のチュンリン・ジョリーン・モク(2015年度滞在)。そして、自転車や徒歩で回りながら、私たちには見慣れた都市の風景を外国人ならではの新鮮な眼差しで捉え直した台湾出身のチェン・ウェイジェン(陳為榛)(2023年度滞在)。
本展では、変化し続ける福岡の多彩な都市の魅力を、3人のアーティストが多様な表現方法で映し出した作品を通して伝えます。
ムン・キョンウォン
1969年ソウル生まれ。梨花女子大学を卒業後、同校とカリフォルニア芸術大学で修士号を取得。1996年から国内外で個展を開催し、2012年チョン・ジュンホとのユニットによる作品《世界の終わり》を「ドクメンタ」に出品。詩的でナラティヴな映像作品を多数発表している。2014年「第5回福岡アジア美術トリエンナーレ」に参加、2015年に「ベネチアビエンナーレ韓国館」に出品するなど国際的に活躍中。2022年には金沢21世紀美術館で大規模なチョン・ジュンホとの共作を開催した。
福岡滞在中の活動
2004年9月8日から12月8日まで滞在
・滞在制作
福岡では、天神地下街と川端商店街で博多工業高校の生徒や市民が出演した《Stop it!》と、3台のモニターテレビを同期させた《Look at me!》の2点の映像作品を制作した。また、福岡市役所1階にオープンする福岡市情報プラザ(当時)に展示する作品や、当館開催の「AniMate。」展への出品など、精力的に活動した。
・成果展示 《第6回アーティスト・イン・レジデンスの成果展パート2》 福岡アジア美術館 7階ロビー
多くの市民との交流から生まれた2つの映像作品を7階ロビーに展示した。バックヤードへの扉全体に《Stop it!》を投影し、当館の廊下のある空間を上手く活用した展示となった。又、受付横のスペースに3画面をシンクロさせた《Look at me!》を展示した。
チュンリン・ジョリーン・モク
1984年香港生まれ。2013年デューク大学大学院実験&ドキュメンタリー・アート修士課程修了。世界各地のレジデンス事業に参加しながら作品を発表。近年は、フィンランド、ノルウェー、スウェーデンでのレジデンス事業に参加しているほか、香港のM+ともコミッションワークをおこなっている。
福岡滞在中の活動
2015年9月16日から11月24日まで滞在
・滞在制作
川端商店街をリサーチし、16軒の店舗の協力を得て、各店舗の開店時間から営業中の店の様子を撮影し組み合わせた映像作品《店を見る》を制作した。さらに、福岡市民の憩いの場となっているアクロス福岡のステップガーデンを、福岡市役所庁舎から 20日間定点撮影して映像インスタレーション作品 「Shiawase no Oka (幸せの丘) 」を制作した。
・ワークショップ
中学生と一緒にストップモーション・アニメーション(コマ撮り撮影)の映像作品を共同制作した。カメラ3台を設置して、床一杯に広げた模造紙に中学生が丸や円を描いていく様子を撮影し、完成するまでの過程を作品にした。
・成果展示《第14回アーティスト・イン・レジデンスの成果展パート2》福岡アジア美術館
交流ギャラリー
川端商店街を撮影した《店を見る》とアクロス福岡を定点撮影したビデオ作品《Shiawase no Oka (幸せの丘) 》を展示した。
開幕日には、あじびホールで《店を見る》の特別上映を行った。
会期中に来館した商店街の方々も生き生きと映しだされる店の様子をとても誇らしげに見ておられた。
チェン・ウェイジェン/陳為榛
1993年台北生まれ。2020年に国立台湾芸術大学修士課程を修了。以降、国内外でグループ展や個展を開催。アーティスト・イン・レジデンスは当館が初めての参加。身近な素材や路上の痕跡を観察し、それらを本来の意味や性質とは異なる方法で作品化することで、レディ・メイド(既製品)、アプロプリエーション(流用)、古典的な美といった概念を再考察している。
福岡滞在中の活動
2023年10月3日から12月20日まで滞在
・滞在中の活動
レジデンス滞在中は、路上観察をおこない、道端や通りの片隅に目を向けて自身の関心を引くものを記録写真として残した。そこから着想を得たものを作品化し、オブジェやインスタレーション作品に展開した。そのほか、「博多灯明ウォッチング」のリバレイン灯明のために地上絵の制作なども行った。
・成果展示 《風景断想-痕跡と記憶をとおして》 アーティスト・カフェ・フクオカ
会場には、点字ブロックを使ったベンチやプラスチックの波板を用いた道路標示、家々の隙間に見られる細々とした置物、コンクリートブロック、水道の蛇口とホース、煙草の吸殻と金属の側溝の蓋などの、路上に見られるありふれたものを要素に解体、再構築して制作したオブジェと平面作品が仮設的に配置された。クロージングトークとして「作品制作をめぐる二人の話 私の福岡路上観察―『つまんない』写真スライドショー」を行った。福岡の人々にとって当たり前に存在してきた風景は、ウェイジェンに見出され、イマジネーションを纏った作品として提示された。