アンキ・プルバンドノ《空腹でいこう》2009年

特別展

あじびレジデンスの部屋 1
「路上のスキャノグラフィー ―アンキ・プルバンドノ」 

期間
2024年4月20日 (土) 〜 2024年9月3日 (火)
会場

アジアギャラリー

《はじめに》

福岡アジア美術館では、1999年の開館当初から、毎年アジアの美術作家や研究者を招いて一定期間滞在していただき、市民との共同制作やワークショップ、トークなどをとおして交流をおこなう「レジデンス事業」をすすめてきました。2022年より、Fukuoka Art Next(彩りにあふれたアートのまちをめざす福岡市主催の事業)の一環として、アジアのみならず、国内外から公募した年間8組のアーティストが、Artist Cafe Fukuoka(中央区城内)のスタジオで制作に取り組んでいます。こうしたレジデンス事業の「これまで」の取り組みとその後のアーティストの活躍を紹介するため、2019年度より「あじびレジデンスの部屋」を開設しました。

今年度最初は、「第4回福岡アジア美術トリエンナーレ2009」の交流プログラムで福岡に滞在したインドネシアのアンキ・プルバンドノを紹介します。
プルバンドノは、2005年から異なるオブジェを結びつけて新たな物語を創り出す、写真作品の制作を各地で展開しています。それらは、撮影にカメラを用いるのではなくスキャナーを使用して対象を読み込む、スキャノグラフィーという手法で制作されています。「第4回福岡トリエンナーレ」では、展覧会ポスターに作品が使用され、私たちに強い印象を残しました。
ここでは、「第4回福岡トリエンナーレ」で展示されたインドネシアと福岡の作品、福岡市内の小学生とおこなったワークショップの記録などを紹介します。さらに、先頃ジョグジャカルタで開催されたプルバンドノの個展の様子を紹介します。現在も新たな展開を見せているプルバンドノの創作の軌跡をご覧ください。

《作家紹介》

アンキ・プルバンドノ (インドネシア)
Angki Purbandono
滞在期間:2009年8月27日~10月1日

1971年スマラン(インドネシア)生まれ。ジョグジャカルタ在住。ジョグジャカルタのモダン・スクール・オブ・デザイン(MSD)とインドネシア・インスティテュート・オブ・アートで学ぶ。2009年の「第4回福岡アジア美術トリエンナーレ2009」では、福岡で滞在制作とワークショップをおこなう。

カメラの代わりにスキャナーを用いて、オブジェに直接強い光を当るスキャノグラフィーという手法は、暗闇の中にくっきりとオブジェのイメージを浮かび上がらせます。路上に捨てられていたゴミや玩具とその地域特有の果物や食材など、プルバンドノの視点で異なった文脈から見いだされたオブジェを組み合わせることで、見る者の想像力をオブジェそのものから解き放ち、より自由な物語へと誘います。

プルバンドノは自身の作品について、「私たちは埃まみれの古いおとぎ話を再発見して、未来の創造的な源泉へと変容させなければならない。作品は日常の中の物語性を再構築するための試みである」と語っています。「知らない地域の物語を自分に身近な文脈のなかに置き直すことが、人間の歴史を学ぶ方法になるかも知れない」という彼の主張は、私たちが多様な価値を認め合いながら現代社会を生きていくためのヒントにもなるはずです。

2024年の2月から3月にジョグジャカルタのギャラリーで開催されたプルバンドノの個展 「Happy Birthday Holy Day」では、2005年から現在までプルバンドノが収集してきたオブジェや作品が、大きなステッカーになって展示されています。そこでは、イメージの物語を読み解きながらステッカーを剥がして別の場所に貼り付けていく、モンタージュ・パフォーマンスが1カ月にわたっておこなわれました。福岡での創作からさらに時を経て、作品はよりいっそう複雑で重層的な物語へと発展し続けています。

《物語の再構築とその先へ》

ワークショップ「おもちゃを組み合わせてアート作品を作ろう!」

2009年 9月7日  福岡市立愛宕小学校4年生 134人
2009年 9月15日 福岡市立原小学校5年生 84人
2009年 9月28日 福岡市立警固小学校6年生 92人

福岡市内3校の小学生たちと不要になったおもちゃを組み合わせて新たな作品を創り出すワークショップをおこないました。
そのうちのある学校の児童たちは、プルバンドノとのワークショップがきっかけで 「日常生活は自分たちでもっと楽しく、面白くしていいんだ」と言うことに気がついて、学習ノートの取り方まで変わったんですよ、と先生が後日、嬉しそうに教えてくださいました。

《トリエンナーレの物語》

「第4回福岡トリエンナーレ」では、初の試みとして市内の芸術系大学の学生を対象にポスターデザインを公募しました。集まったポスターデザインは116点。トリエンナーレの出品作品を象徴的に使用した、学生ならではの自由な発想による多彩なデザインが集まりました。そんな中、ひときわ目を引いたのは、プルバンドノの作品《空腹でいこう》を使ったデザインでした。
選ばれたデザインは、ポスターをはじめチラシや展覧会チケット、展覧会図録の表紙に展開され、《空腹でいこう》はまさに展覧会の顔ともいえる作品になりました。

《福岡の物語を再構築》

プルバンドノは、福岡到着後、インドネシアと同様に路上に捨てられているものを探そうとしましたが、福岡の路上には目ぼしいものは何もありませんでした。その後、がらくたや古いものを探しもとめ、西区の骨董品店にたどり着いたプルバンドノは、大興奮してその後も通いつめ、店主とも仲良くなって様々なものを収集することができました。

「記憶」シリーズより

「記憶」シリーズより

「記憶」シリーズより