コレクション展

○△□

期間
2022年4月7日 (木) 〜 2022年9月6日 (火)
会場

アジアギャラリー

△□

「〇(まる)、△(さんかく)、□(しかく)」ときいて、何を思い浮かべますか?
絵本や童謡? 仙厓さんの絵? 「イカゲーム」? それとも、おでん?
乳幼児が、図形を認識する第一歩として、〇△□をつかった絵本が数多くあり[i]、童謡にもなっています。[ii]

江戸時代、博多で活動した禅僧仙厓義梵(せんがいぎぼん)の作品に〇△□が描かれた作品(出光美術館所蔵《〇△□》)があります。仙厓の作品の意味は、〇が仏教、△が儒教、□が神道をあらわすという説や、この世の存在すべてを3つの図形に代表させ、「大宇宙」を示しているという説など諸説あります。[iii]

昨年、世界90か国で人気を博した韓国のドラマ「イカゲーム」では、1980年代に韓国の子どもたちに流行った陣取りゲーム(イカゲーム)の形や匿名の登場人物のマスク、タイトルロゴなど、さまざまな場面で〇△□が象徴的につかわれていました。

赤塚不二夫の漫画「おそ松くん」では、「チビ太」というキャラクターが、一つの串に△〇□の順でささっているおでんをもっています(ちなみに、具材はこんにゃく、がんもどき、鳴門巻きだそうです)。

このように、〇△□は、身近なことから哲学的なことまで、さまざまなことを象徴する記号として存在します。これは〇△□が、全世界、またどの世代にも認識できる基本的な図形であり、さまざまな意味を込めることができる普遍的な形であるからでしょう。

本展では、○、△、□をつかったアジアの現代美術の作品を紹介します。それぞれの形の意味や作家の意図に思いをめぐらし、形がもつおもしろさに触れてみてください。

〇(まる、丸、円形、球形)

欠けたところがないこと、途切れることのないことから、連続や永遠、完全、宇宙などをあらわします。[iv]

リュ・ションジョンの切り紙による無数のひとがたが出現する大きな丸は無限の宇宙を感じさせ、サイド・ハイダル・ラザは、体内に宿る強力な宇宙エネルギーを幾重もの丸で表現しています。

・リュ・ションジョン(呂勝中)(中国)《〇の負形》1991年

・サイド・ハイダル・ラザ(インド)《クンダリニー》1995年

△(さんかく、三角、三角形)

インドでは、正三角形は男性性、逆三角形は女性性の象徴であり、その他、神性、調和、均整などをあらわします。

モンティエン・ブンマーは、三角形を組み合わせた台座と、僧侶が托鉢で用いる鉢、先端の細い脚を組み合わせ、均整のとれた造形を作り出し、タイの人々の精神生活を表現します。ダリ・アル・マムーンは、赤、青、黄色の三原色を背景とした、3つの三角形の画面という、一般的ではない絵画形式を用い、植民地主義への疑問を投げかけます。

・モンティエン・ブンマー(タイ)《喜捨》1992年

・ダリ・アル・マムーン(バングラデシュ)《彼等がスピーチをしている間》1988年

□(しかく、四角、四角形)

秩序、組織、構造、安定、真理、知恵などを象徴します。[v]

キム・スージャは、韓国特有の新婚夫婦用のベッドカバーと風呂敷包みで、定住(結婚)と移動(別れ)をほのめかし、ラシード・アライーンは、絵画と写真を格子状に並べ、十字架を浮かび上がらせています。

・キム・スージャ(韓国)《演繹的オブジェ》1997年

・ラシード・アライーン(パキスタン)《緑の絵画》1988-92年

△、△□、〇

○、△、□を組み合わせることで、さらに発展した構造や宇宙観を表現することができます。その代表的なものがマンダラ(曼荼羅)やタントラ絵画です。

郭徳俊は、自作の定規をもって撮影したプリント写真に、手描きで図形を描くことで、人為的な規範への疑いを表現しています。

・ウマ・サンカール・サー(ネパール)《ミティラー・マンダラ》1997年

・作家不詳(インド)《無題》1985年

・郭徳俊(クァク・ドッチュン)(韓国・日本)《異空間(プリント4)》1974/2005年*

・郭徳俊(クァク・ドッチュン)(韓国・日本)《異空間(プリント9)》1974/2005年*

*は、Ⅰのみ展示。Ⅱでは郭徳俊の別作品に変更。

 

[i] やまもと もりひさ「まる・さんかく・しかくさん: かたちのえほん」(1976年、あかね書房)、ディック・ブルーナ 、 まつおかきょうこ「まる、しかく、さんかく (ブルーナの絵本)」(1984年、福音館書店)、久住 昌之、久住 卓也「まる・さんかく・しかく」 (2014年、)、大塚いちお「かたちのえほん まる さんかく しかく (福音館あかちゃんの絵本)」(2017年、福音館書店)

[ii]山田とも子作詞、小山田暁作曲・編曲、のこいのこ唄「まる・さんかく・しかく」(1978年、ひらけ!ポンキッキ挿入歌)

[iii] 中山喜一郎「仙厓の○△□―無法の禅画を楽しむ法」(2003年、弦書房)

[iv] アト・ド・フリース「イメージ・シンボル辞典」(1984年、大修館書店)