レジデンス成果展示

第7回アーティスト・イン・レジデンスの成果展 パート1 ~3人のアーティストたちの滞在制作展~

期間
2006年8月5日 (土) 〜 2006年8月20日 (日)
会場

交流ギャラリー

「アーティスト・イン・レジデンス」とは、美術作家(アーティスト)が作品の制作やワークショップなどの創作活動をおこなうために、自分の住んでいる馴染みの場所を離れて、別の場所に一時的に滞在(イン・レジデンス)することです。福岡アジア美術館では、アジアのアーティストを対象に、このアーティスト・イン・レジデンス事業を1999年から継続的におこなってきました。

今年度前期は、カディム・アリ(パキスタン)、サラット・クマラシリ(スリランカ)、ペンギラン・ティンバン・ペンギラン・ハジ・チュア(ブルネイ)の3人のアーティストが、5月からの3カ月間、この事業に参加しました。

カディム・アリは、アフガニスタンの子どもたちが描いたドローイングを携えて福岡にやって来ました。それらは戦闘機や手榴弾や銃などが鉛筆で描き込まれた、アフガニスタンの厳しい現実を物語る絵でした。一方、福岡に到着してからのカディム・アリは、市内の小学生たちを対象にしたワークショップを開催し、今度は「アフガニスタンの子どもたちを幸せな気持ちにする平和な絵」を描いてもらいました。ここに展示している7点の細密画は、これら両国の子どもたちが描いた絵にもとづき、カディム・アリが制作した作品です。

サラット・クマラシリの作品は、戦争の痕跡や故人への思い出が詰まった品々を粘土でかたどったテラコッタ(素焼き)の作品です。広島の原爆や太平洋戦争で亡くなった方々の遺品や福岡大空襲で焼けた屋根瓦。そして、スリランカの内戦で犠牲となった友人たちの愛用したジーンズなど、たとえそれが見ず知らずの誰かであっても、確かにその時代を生き、そこに存在した人々への哀悼の念が、ひとつひとつの作品のなかに込められています。

ペンギラン・ティンバンの作品は、「パディアン」と呼ばれるブルネイの物売りたちにまつわる作品です。パディアンは、そのほとんどが年老いた女性で、彼女たちは木製の手漕ぎボートに乗って、野菜や魚などを水上集落の人々に売り渡り、一家の生計を支えてきました。しかし、そのパディアンも近代化の波にのまれて、今では見ることができません。ペンギラン・ティンバンは、厳しい現実を生きてきた彼女たちの力強い姿とブルネイ社会の未来を作品に描写しています。

これら3人のアーティストは、福岡という馴染みのない土地で、新たな出会いをひとつひとつ重ねながら、作品を制作してきました。本展において、その滞在制作の成果をご覧ください。

 

◆参加アーティスト◆

カディム・アリ(パキスタン)

1978年生まれ。ラホールの国立美術大学校を卒業。2004年に福岡アジア美術館で開催された「パキスタンの現代細密画」展の出品作家。

 

サラット・クマラシリ(スリランカ)
1968年生まれ。ケラニア大学美術学部(彫刻)を卒業後、ロンドンの王立美術大学で彫刻と考古学を学ぶ。

 

ペンギラン・ティンバン(ブルネイ)
1959年、独学で美術を学ぶ。1994年に福岡市美術館で開催された「第4回アジア美術展」の出品作家。