コレクション展

のぞく!~ひそやかにみるアート

期間
2010年4月1日 (木) 〜 2010年6月29日 (火)
会場

アジアギャラリーA

たとえ同じものをみるとしても、公共の場で堂々と見るのと、すき間や穴から自分ひとりでこっそり見る
のでは、対象への反応が違ってきます。人は、「のぞく」とき、その視線の先に何か特別なものを期待します。
「自分ひとりでこっそり」見るという状況は、視線の先の世界をまるで自分が所有しているかのように感じさせ、「見る」行為が、より個人的な体験へと変化するのです。
現代美術の作品の中には、こうした「のぞく」ことを作品の要素にして制作したものが少なからずありま
す。本展では、そうしたインスタレーションや彫刻に加え、のぞき見する人を描いた絵画などで、「みるもの」と「みられるもの」の関係を探ります。場合によっては危うさをもつ「のぞく」という行為、ここでは堂々と、そしてじっくりと楽しんでください。

 

1.のぞいて見る
ここでは、「のぞく」ことを作品の要素にした作品を集めていますが、その意味や効果は作品によって異なります。
例えば、ポー・ポーの作品では、作家の個人的な記憶を鑑賞者と共有し、私的な楽しみとなるよう意図されていますが、これは一方で、作家の母国ミャンマーでは現代美術の展示や発表に制限があることが示唆されています。モンティエン・ブンマーの作品では、のぞくことによって、作品と一体化するような感覚を体験でき、パイマンやチェン・シュンチュの作品では、鏡が取り付けられることにより鑑賞者自身が作品の中にとりこまれるような仕掛けがなされています。ハム・ジンや須田悦弘の小さな作品世界は、近づいてのぞくことによってはじめて、その活き活きとした様子を間近で観察することができます。
いずれの作品にも共通しているのは、「のぞく」ことが、鑑賞者がその作品とより近しく密な関係や空間を作り出す方法となっているのです。

 

2.のぞく人、のぞかれる人
絵画とは、ある種ののぞき窓のようなものです。鑑賞者は、安全な場所から、対象に気づかれることなく、さまざまな情景をのぞくことができます。
このコーナーでは、まずモコやカム・タンなど、作品の中にのぞいている人が描かれています。画面の中心となる対象と鑑賞者の間に、のぞく人物が入ることで、物理的な奥行きに加え、かつ文脈的な広がり、あるいは暗示的な意味あいが加わります。
そして、ホワン・ルイやアリ・ラヒムの作品では、絵の中の人物が、鑑賞者である私たちの方を、壁や塀から顔をだしたり、またはガラス越しにのぞいています。彼らの視線は、安全と思っていたこちら側の世界を脅かすようなどこか不安な感覚を呼び起こし、あるいは何かを訴えかけるような切実さをもっています。
いずれも、鑑賞者から対象への一方的な視点に加え、みるものとみられるものの関係性が変化、また複雑化し、鑑賞者の存在が絵の一部となっているかのようです。