コレクション展

草原の国から―モンゴルの光と影

期間
2011年3月31日 (木) 〜 2011年6月28日 (火)
会場

アジアギャラリーA

どこまでも続くかのように広がる豊かな草原と青い空、そして砂漠。広大な自然のなか、モンゴルの人々は、何世紀にもわたって、遊牧生活を営んできました。その美術作品の多くには、雄大な自然と、自然がもつ神秘的な力、そしてともに生きる動物たちの姿が表されています。一方で、かつて社会主義国として近代化を目指した時代には、社会主義の理想を表現した明るい絵画が、民主化した1990年代以降は、社会主義時代の暗部や都市化によってもたらされる問題など、モンゴルの複雑な歴史を表した作品が制作されています。本展では、草原の国モンゴルの光と影を表す、1960年代から現代までの美術作品を紹介します。モンゴル独特の壮大な風景をお楽しみください。

①社会主義の光と影
モンゴルは、1924年に「モンゴル人民共和国」として独立を果たし、ソビエト連邦に続く世界で2番目の社会主義国として歩みはじめました。それまで美術的な表現といえば、チベット仏教の影響を受けた仏教美術が主流でしたが、ソ連から美術教師が派遣されたことによって、モンゴルでも西洋美術が教えられるようになり、多くの油彩画が制作されました。1960年代頃からは、かつて主に仏教美術で用いられていたモンゴル画やアップリケの技法も復活し、社会主義的な題材やモンゴルの伝統が表現されるようになりました。この時代、美術作家たちは、画材や制作場所など国からの支援を受けて制作を行うことができましたが、一方で、社会主義的な題材が好まれ、国の政策に反するような主題や抽象的な表現は描くことができませんでした。
1980年代後半からは、ソ連の開放政策と連動するように、モンゴルでも民主化運動が起こり、1992年には新生「モンゴル国」が誕生しました。これを機に、ソ連との関係上タブーであったチンギス・ハーンなど英雄の姿や社会主義時代に弾圧を受けた仏教的な主題などを自由に描くことができるようになりました。

②崇高なる自然
社会主義時代から現代まで、モンゴル美術で最も人気のある主題は「自然」です。モンゴルの草原や青空、砂漠などの雄大な風景は、美術作家にとって魅力的な主題でした。そこには、人々の暮らしに欠かすことのできない馬や羊、ラクダといった家畜たちの姿も、しばしば描きこまれています。また、モンゴルの人々は自然の中に霊的な力を感じ、祈りを捧げますが、特にツェグミドの作品には、そうしたモンゴルの人々の宗教観を感じ取ることができるでしょう。さらに、自然を称える作品だけでなく、都市化による自然破壊を訴える作品も制作されています。1990年代以降は、自然を主題にしながらも、抽象的な表現を行う美術家たちも登場しています。