タワン・ダッチャニー
マーラの戦い
モノクロームの大画面には、瞑想するブッダの顔が中央に浮かび、その周囲を凶悪なマーラ(悪魔)たちが取り囲む。牙をむき出したその凶暴な顔つきと、暴力的なまでの肉体美。白と黒だけの簡略な描き方は、さらにこの迫力を増幅させている。しかし、ときに性的な描写をも含んだタワン・ダッチャニーの作品は、仏教に対する冒涜だとして、かつて衝撃的な事件を巻き起こした。すなわち、彼が5年間のオランダ留学を終えて間もない1971年、80人もの学生によって多くの作品が切り裂かれたのである。しかし、彼の作品は決して仏教的世界観を否定するものではない。その内的世界にあっては、このまがまがしく圧倒的な描写も静寂な悟りの境地と破綻することはなく併存するのである。衰えぬ描写力を留めるこの作品は、当時与えた衝撃を十二分に伝えている。(NT)
作品詳細
作品名 | マーラの戦い |
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作者名 | タワン・ダッチャニー |
制作年 | 1989年 |
材質/技法 | 油彩、エナメル・画布 |
サイズ | 176.2×285.0 cm |