キエン・イムスィリ

音楽のリズム

1922-1971年 タイ

細く艶やかな肢体と、笛を吹く優雅な身のこなし。笛に息を吹き込むために軽く頭を傾(かし)げ、その身を大きくくねらすポーズは、首筋から背中、腰へと伸びるしなやかな曲線を生み出している。キエン・イムスィリは、タイの古典様式であるスコータイ彫刻を手本とすることで、この優美な身体表現を獲得したのである。しかし、この作品の魅力は、それだけに留まらない。反り返る足の親指と、少しつりあがる口元。優美な人物像に、笛を吹く瞬間のピンと張りつめた緊張感が生まれる。古典様式の単なる再生に陥らない、タイ近代美術として生まれた名品である。そして、この緊張感ある作品を生み出せたのも、タイ近代美術の拠点シラパコーン大学で西洋の写実的な彫刻技術を身につけたキエン・イムスィリだからこそであろう。(NT)

作品詳細

作品名 音楽のリズム
作者名 キエン・イムスィリ
制作年 1949年
材質/技法 ブロンズ
サイズ 53.0×39.0×36.0 cm