ヨン・ムンセン(楊曼生)
堂々とした女性
マレーシア近代美術の形成において、ペナンの中国系画家のグループ、嚶嚶(インイン)芸術社(1936年設立)の果たした役割は大きい。なかでもヨン・ムンセンは、中核メンバーとして同社を率い、いち早くゴーガンなどの西欧近代絵画の主題や表現を受容して、「南洋」らしい人物や風俗を題材にした絵画世界を築き上げた。そうした先駆的な仕事が評価され、のちに「マレーシア近代美術の父」と仰がれている。この作品の場面設定や褐色の肌の女性は、まさにゴーガンの描く自然の中のタヒチの女性を想起させ、簡略化された身体や景物の形には、キュビスムの受容も見て取れる。しかしその一方で、水辺にたつ二本の木という基本構図や線描主体の表現には、画家が身につけていた中国の伝統絵画の応用が見られる。「南洋」の中国人画家ならではの、独自の主題や表現を模索した30歳代半ばの作品になる。(RT)
作品詳細
作品名 | 堂々とした女性 |
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作者名 | ヨン・ムンセン(楊曼生) |
制作年 | 1931年 |
材質/技法 | 油彩・画布、板 |
サイズ | 88.8×65.7 cm |