最近、美術館がおでかけスポットとして人気です。作品を鑑賞することはもちろん、それ以外にも多様な楽しみ方ができるように、それぞれの美術館が工夫を凝らしているのが理由です。ここでは、「あじび」という愛称で親しまれる福岡アジア美術館を楽しむいくつかの方法をご紹介します。

福岡市にあじびがある理由

 Google Mapで福岡市を検索し、表示エリアを広くしてみてください。福岡市が韓国や中国、台湾と近いことがひと目で分かります。福岡市には、“アジアとの交流の窓口”として長い歴史があり、この土地に“世界唯一の、アジアの近現代美術を扱う美術館”として生まれたのがあじびです。

 あじびは、福岡市の中心地・天神から福岡市営地下鉄でわずか一駅、博多駅から二駅の「中洲川端駅」と直結した、街なかの美術館です。周りには歌舞伎やミュージカルが楽しめる「博多座」や、活気あふれる「川端通商店街」、人気の観光地「櫛田神社」などがあり、観光客はもちろん市民にとっても親しみのある博多旧市街エリア。そうそう、あの有名なお祭り「博多祇園山笠」が行われるのも、このあたりです。

大好きなあの国の作品が見られます

 みなさんはこれまでに行ったお気に入りの国や、いつか行きたいアジアの国はありますか? 韓国? 台湾? それともベトナムやインドでしょうか。あじびは、東アジア・東南アジア・南アジアの23カ国・地域の作品を収集し展示しています。ここにくれば、あなたが好きな国のアートに出会えるかもしれません。

 展示された作品はしばしば、それぞれの国や地域の暮らしや日常を思い起こさせます。例えば、アジアでよく見かける自転車タクシー「リキシャ」がアートだなんて考えたことはありますか?バングラデシュのアーティストによるカラフルで楽しいリキシャを見れば、次に旅に出たときの景色がちょっと変わるかもしれません。

 さらにここでは、これまでに100人以上ものアジアの美術作家や研究者が滞在して作品づくりや研究を行ってきました。もしかしたら、あなたが来館するタイミングに、目の前でアートが生まれる現場を目撃できるかも。同時代に生きるアーティストの現代美術を扱う美術館ならではの出会いです。

あじびに来たら見逃せない!
ここをチェック

 あじびの作品の多くは写真撮影OK。作品はもちろん、作品以外でも思わず写真をとりたくなるトリビアをこっそり教えます。

不思議な形の
家具

館内に点在する家具は、実は2005年にASEANグッドデザイン賞を受賞した、東南アジアのデザイナーによるもの。ソファの座り心地をぜひ確かめてみて。

アートなトイレ

子ども用のトイレには、バングラデシュのリキシャアーティストが描いたゆかいな動物ペインティングが!

謎の文字

8階から7階へ降りるエスカレーターから見えるバナーは、中国の所蔵作家であるシュ・ビン(徐冰)が考案したオリジナル文字で書かれています。なんと書かれているでしょうか?

アートの中の福岡

1階のエレベーター前には、中国のアーティスト、ブ―・ホァ(卜樺)《最良のものはすでにある》という壁画作品があります。縦4メートル、横11メートルの巨大壁画の中には福岡ならではのモチーフが隠されているのですが、いくつ見つけられますか?

絵本や書籍が約1万冊!
アートとカフェを一緒に楽しむ

 「あじびに行ってみたいな」と思った人は、まず7階のカフェとショップを訪れてみるのもおすすめです。「アートカフェ」は、広々とした空間と1万冊ものアジアやアートに関する書籍が揃う穴場スポット。友人との待ち合わせやランチ、一人時間を楽しむなど、多くの人が訪れています。定番カフェメニューはもちろん、インドの郷土料理「コフタ」や中国の「花茶」などが楽しめます。

 また「ミュージアムショップ 」には、あじびオリジナルグッズやアジア各国のカラーが色濃く表れたグッズがずらり!雑貨好きには見逃せないポイントです。
 グッズのなかによく登場し、あじびのキャラクター的に使われているかわいい子鹿は、インドの巨匠ジャミニ・ロイの《子鹿》という、れっきとした作品です。

 「アジア美術ってなんだか難しそう…」と思っていたあなた、まずは旅行気分、散歩気分で足を運んでみては?まるで現地を訪れたような空気感の中で、自分だけのあじびの楽しみ方が見つかるはずです。