福岡アジア美術トリエンナーレ
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第3回福岡アジア美術トリエンナーレ2005
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トリエンナーレへの道
ネパール・ブータン・タイ編:ネ.ブ.タの夏―現代の伝統美術をめぐる旅
 「これを使ってよく見てくれ。」ネパールの首都カトマンズ、作品調査でやってきたポーバの画家に会うたびに、手渡されたのは虫眼鏡でした。「ポーバ」とは、ヒンズー教や仏教の神仏を描いたネパールの伝統絵画です。いわゆる「タンカ」(軸装仏画)と共通点も多いのですが、よりネパール独自の様式(ネワール様式)が強い作品群ということができるでしょう。
 パキスタンの細密画に勝るとも劣らない、細い筆で描かれたその超絶的な画技は、肉眼よりも虫眼鏡でこそ見えるのです。こうした彼らの技術は、学校ではなく、師から弟子へ、代々絵師の家系では父から息子へと継承されています。現在は、宗教的な目的というより、現代美術の一翼を担うものとして制作されていますが、テキストを参照しながら図像的な規則に従って制作されています。ただし、彼らは手本をただ引き写すのではなく、構図、彩色、画材等、各人で工夫を加えています(ただし、見分けるのはかなり難しい)。技術や工夫を凝らすことによって、リアルさや美しさを求める彼らの姿に、私は、大学時代に研究していた鎌倉時代の仏師たちの姿を見るようでした。
 ところ変わって、ブータンの国立13工芸学校で教えられていた仏画は、顔の部位の位置などの細かい比率まで決まっており、手本を忠実に写すことが重要とされていました。そのため、作家による違いどころか、際立って上手な作家を見つけることすら難しいものでした。国として伝統技術の保存を第一に考えるブータンだからこその方針なのでしょう。
 タイのチェンマイ。ブッダの物語と人々の暮らしを、淡い色彩とやわらかな輪郭線で描く新伝統派の画家ポンチャイ・ジャイマー。彼は、学生時代、卒業制作として3年かけて寺院の壁画を制作しました。自ら寺院に依頼したため、報酬なしでの制作でしたが、驚くことではないでしょう。元々、仏教においては、仏菩薩の絵や彫刻などを制作することは、工巧明(くぎょうみょう)という学問のひとつに数えられ、重要視されてきました。教えを伝える有効な手段でもあり、制作自体が功徳を積む意味があるからです。
 この夏、伝統美術、宗教美術にまつわる多くのアーティストたちに出会い、ひとくちに「伝統的」な美術といっても、様々なあり方があるのだと考えさせられました。「伝統」とは、過去のものではなく、新たに創り出していくもの。そうした活動をいい意味でサポートできる美術館でありたいものです。
虫眼鏡で作品を観察中。右はウダイ氏、作品はウダイ氏の弟ディネシュ氏のもの
ポーバ作家ディーパック・ジョシ氏の絵筆
ディーパック氏のお宅に集まってくれたポーバの作家たち(最後列左から3人目が筆者)
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